INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.1

 PROGRESSIVE FOrMというレーベルを2000年から運営しているnikと申します。  
その PROGRESSIVE FOrMを立ち上げる大元になったのが<INDOPEPSHYCHICS>です。  


 INDOPEPSHYCHICS 
東京のアンダーグラウンド・シーンで活躍していたDJ Kensei、nik、D.O.I.によるプロダクション・チーム<Indopepsychics>(インドープサイキックス) 。1995年結成、90年代中~後期にキングギドラをはじめ多くのヒップホップのプロデュース/リミックスを手掛る。その後90年代末よりブレイク・ビーツ/エレクトロニカに傾倒、様々なインストゥルメンタル楽曲を世に送り出し、2002年にその活動を閉じる。タイトに刻まれるリズムの上を縦横無尽にエレクトロニック・サウンドが這いまわり、脳内に巻きついてくるかのような唯一無二の実験音響を提示、日本のエレクトロニック・インストゥルメンタル・シーンを牽引する。また最新のコンピュータ・テクノロジーを駆使してオリジナルのアブストラクト・サウンドを追求する姿勢はいたって強固である。リリースとしては、90年代末~00年代初頭にリミックスしたヒップホップやオリジナルのブレイクビーツ作品を中心としてまとめた「MECKISH」、2000~2001年にプロデュースしたエレクトロニカやダブを中心としたオリジナル作品をまとめた「LEIWAND」という2枚のアルバムを2002年に発表、また4枚の12インチを世に残した。  

http://www.progressiveform.com/artist/indopepsychics.html

https://www.discogs.com/ja/artist/19112-Indopepsychics 


 DJ Kenseiと僕が1993年に新しく開店したタワーレコード新宿店の店員で出会ったところから始まります。当時DJ Kenseiは既にディスコでのDJを経てHip Hop DJとして都内での知られた有名DJでした。僕は高校~大学とギターを弾いていたんですが、大学の頃にはジャズ~フュージョンの流れから90年代初頭にムーブメントが起こったSoul II SoulやBrand New HeaviesなどUKソウル~アシッドジャズ全般に傾倒。  
Soul II Soul「Get a Life (Official Video)」

THE BRAND NEW HEAVIES「Never Stop」

 またタワーレコードで僕ははジャズ担当であった事から、東海岸のHip Hopだとちょうど1993年に発表された<A Tribe Called Quest>の3rdアルバム「Midnight Marauders」らに代表される、サンプリングソースとしてのジャズやレアグルーヴなどと、ブレイクビーツとして主に60年代後半~70年代のソウルやフュージョンなどの<ネタ文化><(ネタを)DIG(掘)る>という事がおそらく接点となり、いつの間にかつるむようになったんだと思います。  

A Tribe Called Quest 2ndシングル「Award Tour」  

 そのメインのネタとして有名なのが、 Weldon Irvine – We Gettin’ Down (1975) ※03:31辺り必聴⇨ 

 当時のDJ Kenseiはスクラッチでも才能を見せていたので、まわりに彼を慕う若手DJなども少なからずいたのと同時に、彼はサウンドプロダクションを確かに協力/サポートするマニュピレーターも探していたと記憶しています。  
そんな折、DJ Kenseiまわりに<シンタロウ>という若手Dがいて、その<シンタロウ>が当時のバイト先に「サウンドプロダクションに詳しい人がいます」と紹介してもらったのが、もう20年以上に渡りHip Hopやダンスミュージック全般のエンジニアリングを引っ張っているエンジニアの<D.O.I.>こと土井さんでした。  
確か1994年だと思います、当時僕の車でKensei君と現在の西東京市某所に土井さんが借りていた一室に初めて伺った事を薄っすら覚えています。  
運命の糸かどうかは分からないけど、僕ら3人は毎週土井さん宅でプロダクションを共同で行うようになりました。  
 
するとDJ Kenseiの古い知り合いでニューヨークを拠点にDJをしていた日本人DJ(僕個人としての私的な繋がりは殆どなかったのもあり名前はすっかり失念…)が一時帰国した際に、「今ニューヨークで<INDOPEPSHYCHICS>という言葉が流行ってるけど、プロダクションネームにどう?」という提案を受け、1995年に命名したのが経緯です。  
INDOPEPSHYCHICSは確か「ハイな」「いっちゃってる」的な当時のスラングだった記憶。 

 そんなINDOPEPSHYCHICSで最初に担当した仕事が、1995年12月10日にPヴァインから発売された、 ZEEBRA(ジブラ)、K DUB SHINE(ケーダブシャイン)、DJ OASIS(ディージェイ・オアシス)からなるキンググドラのデビューアルバム「空からの力」に収録された「行方不明」のリミックス(1996年)。 

 使ったビートは流石に覚えてないけど、ネタはCal Tjaderだったと思う。 

行方不明 (DJ Kensei’s Smooth Mix) 

 2回目では、INDOPEPSHYCHICSがHip Hopからインストのブレイク物やエレクトロニック・ミュージックに傾倒していった流れなどに触れたいと思います。 

2025/9/18  nik

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この記事を書いた人

東京出身。PROGRESSIVE FOrMレーベル主宰/エージェントなど。
訪問した国は南北アメリカ大陸10カ国、ヨーロッパ8カ国、アジア圏3カ国。
1993年にDJ Kenseiと、1994年に土井さん(後のD.O.I. ※D.O.I.という書き方は僕が提案)と出会い、1995年に音楽プロデュースユニットINDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)結成。
1996年のキングギドラ「行方不明」のリミックスを皮切りに、SHAKKAZOMBIE「手のひらを太陽に〜ACROSS THE 20 MIX〜」他の多くのHip Hop作品から、Sunaga T Experience「Gemini IV / V Space Nova!」、UNKLE「THE KNOCK (INDOPEPSYCHICS REMIX)」などインスト作品なども幅広く手掛けつつ、2000年にPROGRESSIVE FOrMを立ち上げる。
DJ Kenseiとも繋がりが深かった京都のDJ Kazumaから新しい才能と京都外国語大学で活動していた青木 孝允(AOKI takamasa)と高木正勝によるユニット<SILICOM>と出会い、2001年にPROGRESSIVE FOrMよりAOKI takamasa 1stアルバム「SILICOM」とSILICOM「SILICOM」DVDをリリース。
2002年にはINDOPEPSYCHICSのHip Hopやビート主体の初期作品「Meckish / Nittioatta.Nittionio」とエレクトロニカなど後期作品をまとめた「Leiwand」をリリース。
移行、半野喜弘、杉本佳一によりVegpher、Fugenn & The White Elephantsなど才能溢れるアーティストの作品をリリース。
2002年6月にバルセロナsonarにてレーベル・ショーケース、11月に六本木ヒルズTHINK ZONEにて初のレーベル・イヴェント"Voyage"を開催。2003〜2004年にはDaisyworld Discsとイヴェント"audio forma"を開催、2004/2006年にsonarsound tokyoを共同開催。
2011年6月にレーベル10周年イベントを恵比寿LIQUIDROOMで開催し1000名を超える集客を記録。
そして2020年10月にレーベルとして100枚目のアルバムninomiya tatsuki『scat』PFCD100をリリース。
2024年9月18日に2000年代以降の電子音響を支えて来た1人と言えるTAEJI Sawai唯一のアルバム「AS PLANETARY DREAMS」PFCD112をリリース。


2004〜2008年はフルでTOWA TEIのマネージャーを担当。
2013〜2015年には「EMAF TOKYO」を主宰、ヤン富田、Fennesz、Carsten Nicolaiをはじめ数多くのアーティストを招聘。
細野晴臣氏のマネージャーを長く務められた故東氏が主催された「De La FANTASIA」ではcyclo.-Ryoji Ikeda+Carsten Nicolai-やTOWA TEI他をブッキング。
2014年12月のLIQUIDROOM公演でJamie xxを招聘、2015年9月にFenneszの代官山UNIT公演を主催。


Bajune Tobetaのエージェントとしても数多くの作品に関わり、2010年1月13日に発売されたのアルバム「Africna Mode」では多くの楽曲の制作をサポート、2015年の「TOKYO GALAXY」ではArto Lindsayをブッキング、2021年9月にリリースされたbajune Tobeta「すばらしい新世界 〜RELAX WORLD〜」ではChara、Mummy-D、堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、坂本龍一によるアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤「CASA」で共演しジョビンのバックを務めていたモレレンバウン夫妻をブッキング。

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