灯りの消えない窓を見上げながら

夜になると、都市は少しだけ本音を漏らすように思う。 

昼の輪郭ははっきりしすぎていて、 

どこにも余白がなくて、 

息をするだけで意味が問われるような窮屈さがあるけれど、 

夜の都市は、形が曖昧で、 

どこかで誰かが静かに泣いたとしても、それはすぐに灯りに溶けていく。

信号待ちの交差点で、 

ビルのガラスに映る自分の姿が一瞬だけ他人に見える時がある。 

その距離感が、少し好きだ。 

自分から離れすぎず、近づきすぎず、 

ただ「いま、ここにいる」というだけの存在に戻る感じ。

最近、夜に少しずつ読み返している本がある。 

どのページから読んでもいいし、 

読み終わらなくてもいい。 

ただ、言葉の湿度を手で確かめるみたいに、 

ゆっくり触れていく本。

『夜と霧』 https://amzn.to/4qMbl7p

この本は、何かを教えてくれるというより、 

「もう知っていたこと」に静かに光を当ててくれる。 

耐えるとか、強くあるとか、そういうものではなくて、 

それでも、生きているという事実そのもののあたたかさに触れる感覚。

夜の都市は残酷でもあるけれど、 

同じくらい優しい。 

どちらかだけ、なんてことはなくて、 

その両方のあいだで、私たちは揺れながら歩いている。

今日も、灯りの消えない窓を見上げながら帰った。 

誰かがまだ起きているというだけで、  すこし呼吸が楽になる夜がある。

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この記事を書いた人

眠りと瞑想のための癒やしサウンド&コンテンツ、プロダクトを制作、ECショップ運営。また癒やし空間スペースを展開。またヒーリング・ブランド「RELAX WORLD」のプロデューサー。株式会社クロアの代表取締役。坂本龍一、アート・リンゼイ、大貫妙子、高橋幸宏、CHARA、キリンジなどをゲストに迎えたソロアルバムを発表。

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