INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.4「SILICOM」(1/2)

第一回目「INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.1」では、PROGRESSIVE FOrMを立ち上げる大元になったユニット<INDOPEPSHYCHICS>の誕生から最初のワークまでの1995~1996年頃を紹介。
第二回目「INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.2」 では<INDOPEPSHYCHICS>の活動がHip Hopからエレクトロニックに変遷していった流れから、SILICOMとして作品を発表する青木 孝允(AOKI takamasa)と高木 正勝との出会いまでの1996~2000年を紹介。
そして前回の第3回「青木孝允と高木正勝がSILICOMとして作品を発表した2000年頃のエレクトロニカ」では、SILICOMが処女作をリリースした2001年頃の主に欧州のエレクトロニカ状況を紹介しました。
第二回目の最後で、「2000年の初頭だったと思う、DJ Kenseiと親交の深かった京都のDJ Kazumaから<京都で面白い事をやっている大学生達がいるんだけど今度京都来た時に会いに行かない?>と紹介されたのが青木 孝允(AOKI takamasa)と高木 正勝で、彼らがシェアしていた京都市内のマンションで彼らと会う事になりました。言わずと知れた翌2001年にSILICOMとして作品をリリースした2人で、彼らのMacで当時制作をしていたSILICOMのDVDに収録される事になるオーディオ・ビジュアル作品を中心にとても興味深く作品を拝見させて頂いたので事を覚えています。3回目では、PROGRESSIVE FOrMレーベルの最初のリリース作品となった<SILICOM>に触れたいと思います」と閉じつつ、前回の第3回では寄り道をしました。
今回はSILICOMに関して2回に分けて、かつ残っている情報に基づいて紹介しようと思います。
AOKI takamasa (青木 孝允)、高木 正勝、という名前はエレクトロニック~フォークトロニカ~アコースティック界隈の音楽やアート全般に関心のある方だったら多くの方が少なくとも名前くらいは見聞きした事があるのではないかと思います。
というのも、彼らはSILICOMとして作品をリリースした2001年から今年2025年までずっと活動を続けてきたからです。
AOKI takamasa http://www.aokitakamasa.com/
自身のHPに記載の現在のプロフィールは
1976年大阪府出身。2001年初頭に自身にとってのファースト・アルバム 『SILICOM』をリリースして以来、LIVE, DJ、楽曲制作を中心に国際的な活動を続ける。2004年~2011年はヨーロッパに拠点を置き、2011年に帰国。国内外のアーティストのremix, プロデュース、ミキシングも担当。写真家としても活動。
AOKI takamasa was born in 1976 and raised in Osaka, JP.
Since releasing his first album, SILICOM, in 2001, he’s worked internationally as a producer, live performer, and DJ. Between 2004-2011, he was based in Europe before returning to Japan in 2011. Since then he has done several remixes for both international and domestic artists, undertaking the production and mixing as well. He also works as a photographer.
高木 正勝 http://www.takagimasakatsu.com/
自身のHPに記載の現在のプロフィール
作曲家、ピアニスト、映像作家。1979年10月3日、京都生まれ。2001年、音楽と映像のアルバム『pia』でデビュー。ピアノ演奏を中心とした音楽活動と並行して国内外の美術館などで映像展示を行なった。『World is so beautiful』『タイ・レイ・タイ・リオ』『おむすひ』『山咲み』などを発表。近年は山村にある自宅の窓を開け自然豊かな環境をそのまま切り取ったピアノ曲集『マージナリア』を継続して発表している。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』、映画『おおかみこどもの雨と雪』『静かな雨』『光る川』などの音楽を手がける。著書に『こといづ』、自作曲の楽譜出版に取り組んでいる。
この2人が京都にある大学の先輩・後輩で、青木は音楽、高木は映像で当時注目を集め始めていたその後に繋がるアート寄りなオーディオ・ビジュアルのユニット「SILICOM」を組んでいました。
と言ってもその存在を知っているのは実際現在でおそらく40代前半までの人ではないかと思います。
例えば2000年に18歳だった方が今年2025年に43歳、勿論後追いでSILICOMの存在を知った方も少なからずいるかもしれません。
論より証拠、まずはSILICOMのライブを観てみましょう。
1)SILICOM 2001/12/31@Garden Room AOKI takamasa and Takagi Masakatsu「2001~2002のカウントダウン!!!!」(諸事情でリンクは機能しておりません) https://www.youtube.com/watch?v=bg-DZvBS2lE
2)SILICOM 2002/1/1@Garden Room AOKI takamasa and Takagi Masakatsu
(諸事情でリンクは機能しておりません) https://www.youtube.com/watch?v=Vlqib2iUcNw
おそらく現存するSILICOMの映像で今でも見れるのは上記の2つのみだと思います。
以下の画像はその際のフライヤーです。

音楽と映像という観点で見ると、それまでも例えばDJxVJといった形で現場(=クラブなど)で演じられる事は多かったですが、よりエレクトロニカ~IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)との関係性が強くなったのは、1997年頃にサンフランシスコのソフトウェア企業Cycling ’74(サイクリング・セヴンティーフォー)がMaxを買収し新たにMax/MSPを開発・リリース、MaxとMSP(信号処理と音響制御に特化したプラグイン、リアルタイム音声処理を可能にする拡張)の統合により、ビジュアルプログラミング環境とデジタル信号処理(DSP)が統合され、音楽制作やインスタレーション、ライブパフォーマンスにおいて強力なツールとなった背景があります。
特にAOKI takamasaは1997年に21歳の大学生で、正に申し子とも言える存在の1人だったと思います。
【DVD】
1)
Cat No.: PFDV01 (DVD)
Artist: SILICOM
Title: SILICOM
Release Date: 2001.1.10
Tracklisting:
01. Rec.
02. Jung 25
03. Sin.
04. Ham.
05. Kes.
06. 5
07. Nuron
08. Gar.
09. Room
10. G
11. Wasser
Film Director: Takagi Masakatsu
Music: AOKI Takamasa
青木孝允と高木正勝による音と映像の伝説的なユニットの処女作。青木の硬質かつグルーヴのある楽曲に、高木の実写をベースに細かなエディットが施された映像が重なり、2000年代の幕開けに相応しい傑作が生まれた。 https://www.discogs.com/release/1047602-Silicom-Silicom
2)
Cat No.: PFDV02 (DVD)
Artist: SILICOM
Title: SILICOM two
Release Date: 2002.1.25
Tracklisting:
1. Ope.
2. Monc.
3. Stdt.
4. Mry.
5. Exp.
6. Exp.2
7. Std.
8. Silicom Live
Film Director: Takagi Masakatsu
Music: AOKI Takamasa
青木孝允と高木正勝によるSILICOMの2作目にして最後の作品。青木の1stアルバム『SILICOM』と2ndアルバム『SILICOM two』からの楽曲の高木が映像を付け、最後には当時のSILICOMの貴重なライブが33分収録された。「Mry.」における高木の映像は特筆すべき素晴らしい出来である。 https://www.discogs.com/release/587921-Silicom-Silicom-Two
SILICOMとしてDVDをリリースした上述の1st「SILICOM」と2nd「SILICOM two」の2作品の内、「SILICOM two」には2000年7月4日に京都外国語大学のギャラリーで行われた33分程の<SILICOM LIVE>が収録されていますが、「SILICOM two」自体もうほとんど市場には出ていないので見れる可能性はかなり低いのですが。
因みに外語大でのライブではcarpark record(US)やP-VINEなどでアルバムをリリースした
小栗栖憲英( http://www.ogurusunorihide.net )も参加しています。

PROGRESSIVE FOrMというレーベルは勿論INDOPEPSYCHICSが母体となってはいますが、PROGRESSIVE FOrMを始めるきっかけになったのはSILICOMの存在で、彼らの作品をリリースするレーベルとして始動したのがPROGRESSIVE FOrMと言えます。


ここで1stの「SILICOM」に収録されている作品を紹介し、SILICOMの第一回目とします。
(諸事情で以下5つのリンクは機能しておりません)
M1 SILICOM (AOKI takamasa & TAKAGI masakatsu) – rec. (from DVD “SILICOM”) 2001 https://www.youtube.com/watch?v=4DrtfhoKhZQ
M2 SILICOM (AOKI takamasa & TAKAGI masakatsu) – jung 25. (from DVD “SILICOM”) 2001 https://www.youtube.com/watch?v=66wfMaN05as
M3 SILICOM (AOKI takamasa & TAKAGI masakatsu) – sin. (from DVD “SILICOM”) 2001 https://www.youtube.com/watch?v=syqUx3ekC0Q
M4 SILICOM (AOKI takamasa & TAKAGI masakatsu) – ham. (from DVD “SILICOM”) 2001 https://www.youtube.com/watch?v=k7a4Q1ft3wE
M5 SILICOM (AOKI takamasa & Takagi Masakatsu) “Kes.” (from DVD “SILICOM”) https://www.youtube.com/watch?v=okF6–CNGS

2025/10/9 nik c/o PROGRESSIVE FOrM
