INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.5 「SILICOM」(2/2)~「AOKI tamakasa」

前回の「SILICOM」(1/2)では、AOKI takamasaと高木 正勝がSILICOMとしてDVD「SILICOM」と「SILICOM two」を2001~2002年とリリース、2001年から2002年になるカウントダウンイベントでは恵比寿のガーデンルームでは正に2001年から2002年になった瞬間にパフォーマンスをしていた映像と、2001.1.10にリリースされたDVD「SILICOM」からの映像を5本紹介しました。

 

PROGRESSIVE FOrM発足時の顔でもあったDJ Kenseiは当時日本のDJでも確固たるネームバリューを持ったDJで、当時は新宿のLIQUIDROOMで2001年に始まった名物企画〈7HOURS〉にも、DJ Krush、石野卓球、井上薫らに連ねDJ Kenseiも登場。※〈7HOURS〉とは、1人のDJが7時間に渡って1人でDJをする企画。

そういった状況もあり、DJ Kenseiが出演するイベントにSILICOMも一緒にブッキングしていました。

SILICOMの主だったライブ出演

2001年9月1日(土)~2日(日)

メタモルフォーゼ 2001@日本ランド

Solar Stage:hoon/坂本龍一、MONOLAKE、COM.A、ENO、EYE、JOSEPH NOTHING、KAORU INOUE、KENJI TAKIMI、DJ KENSEI、KIHIRA NAOKI、dj klock、REBEL FAMILIA、SILICOM、1945 feat. GOMA

Lunar Stage Balearic :デリック・メイ、CARI LEKEBUSCH、SUBHEAD、JOHN SELWAY、田中フミヤ、MAYURI、DJ SHUFFLEMASTER、TOBY、DJ TSUYOSHI、Q’HEY

2001年11月10日(土)

TORTOISE JAPAN TOUR 2001@新宿 LIQUID ROOM 

出演:TORTOISE ORCHESTRA(John McEntire+Doug McCombs+John Herndon+DanBitney+Jeff Parker+Rob Mazrek+Chad Tayrer+Noel Kupersmith)

HUMAN CONDITION aka John McEntire

ORTON SOCKET aka Rob Mazrek

CASEY RICE、GROUP

NOBUKAZU TAKEMURA CHILDISC ORCHESTRA

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN

DJ KENSEI with SILICOM

同時に今では多くの人がご存知と思いますが、高木 正勝は映像のみではなくピアノを基軸に音楽も作っていて、当時注目の新興レーベルであったニューヨークのCarpark Recordsから1stアルバム「Pia」(carpark cd10)をリリースしました。

そういった事情から、青木とSILICOMとしての活動時間が絞られていったようです。

AOKI takamasaの1stアルバム「SILICOM」と2ndアルバム「SILICOM two」からの楽曲に高木が映像を付け7曲に、2000年7月4日に京都外国語大学のギャラリーで行われた33分程の<SILICOM LIVE>を収めたDVD「SILICOM two」を2002年1月25日にリリースをもって、SILICOMは自然解散のような形でその活動に終止符が打たれた事になりました。

なお現在、とある理由でPROGRESSIVE FOrMのYoutubeアカウントが閲覧出来ない状態になってしまった為、SILICOMのオーディオ・ビジュアル作品を見れる機会はほとんど無くなってしまいましたが、Youtubeで当時のライブ音声に触れられるのを見つけたので紹介します。

SILICOM LIVE

2001/5/13「Kyoto Metro「remo.」「rec.」

20015/23@LIQUIDROOM「untitled」

2001/10/8@Tokyo「SILICOM two」

高木 正勝についてはその後ソロ・アーティストとして独自の路線を進む事になり、リリース作品としては自身のwebsiteやDiscogsで触れる事が出来ます。

http://www.takagimasakatsu.com

https://www.discogs.com/ja/artist/40999-Takagi-Masakatsu

さて、ここからはSILICOMの音楽担当として初作品をリリースしたAOKI tamakasa(青木孝允)にフォーカスしたいと思います。

http://www.aokitakamasa.com

https://www.discogs.com/ja/artist/42805-AOKI-Takamasa

1stアルバム「SILICOM」はDVD「SILICOM」と同じく2001年1月10日ですが、実はPROGRESSIVE FOrMの最初のリリースとして2000年の秋頃にリリースされたのがAOKI takamasa「kes. / std.」pfL_1 (12inch)です。

https://www.discogs.com/release/63374-AOKI-Takamasa-Kes-Std

 

AOKI tamakasaというと、硬質でキレの鋭いビートがイメージされますが、当時のインタビューでも好きな音楽アーティストに関して良く「スティーヴィー・ワンダー」と応えていました、要は音楽の素としてグルーヴ/グルーヴィーな要素が根付いているので硬質でキレの鋭いけど、無機質でよりテクノライクなビートにはならず、有機的なリズムを人が無意識の内に感じとっているのではないかと思っています。

また1st「SILICOM」よりはもう1枚の12inchも2001年春頃にリリース。

AOKI takamasa「vos. / ham.」pfL_4 (12inch)

https://www.discogs.com/release/63372-AOKI-Takamasa-Ham-Vos

 

この2曲は対照的ではあるけど共にフロア/DJ向きで、エレクトロニカのエッセンスが全て詰まったかのようなダウンテンポの8ビートに浮遊感ある綺麗なメロディーが乗る「vos.」と、後の半野喜弘と田中フミヤが始めたop.discのテクノ路線に繋がる直球なミニマルテクノ感溢れる「ham.」のカップリングで、当時人気の12inchでした。

また興味深いのは、AOKI Takamasa 1st「SILICOM」と、SILICOM DVD「SILICOM」は共に収録は11曲ですが、アルバムとしての音楽の流れと、オーディオ・ヴィジュアル作品としての映像の流れなども加味し、収録曲とトラックリスト(曲順)を変えている点も興味深い。

<CD>

Cat No.: PFCD01 

Artist: AOKI takamasa

Title: Silicom

Release Date: 2001.1.10

Tracklisting: 

01. Std.

02. Jung 25

03. Sin.

04. Ham.

05. Exp.2

06. Exp.

07. Nuron

08. Gar.

09. Kes.

10. Vos.

11. Rec.

青木孝允の処女作。1曲目の「std.」こそ本作を総括する彼の音楽観でありその後の原点。「リズムの構築こそに自分本来を見い出すことができる」という主張のもとにmax/mspより構築された高精度な電子音の洪水との見事なまでにバランスの取れた融和。その自らの表現を高らかに宣言した。

https://www.discogs.com/release/53619-AOKI-Takamasa-Silicom

全曲視聴:https://progressiveform.bandcamp.com/album/aoki-takamasa-silicom-pfcd01 <https://progressiveform.bandcamp.com/album/aoki-takamasa-silicom-pfcd01

 

 

 

<DVD>

Cat No.: PFDV01 (DVD)

Artist: SILICOM

Title: SILICOM

Release Date: 2001.1.10

Tracklisting: 

01. Rec.

02. Jung 25

03. Sin.

04. Ham.

05. Kes.

06. 5

07. Nuron

08. Gar.

09. Room

10. G

11. Wasser

Film Director: Takagi Masakatsu 

Music: AOKI Takamasa

青木孝允と高木正勝による音と映像の伝説的なユニットの処女作。青木の硬質かつグルーヴのある楽曲に、高木の実写をベースに細かなエディットが施された映像が重なり、2000年代の幕開けに相応しい傑作が生まれた。

https://www.discogs.com/release/1047602-Silicom-Silicom

 

次回はAOKI takamasaの2ndアルバム「SILICOM two」を中心に紹介しようと思います。

2025/10/17  nik c/o PROGRESSIVE FOrM

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この記事を書いた人

東京出身。PROGRESSIVE FOrMレーベル主宰/エージェントなど。
訪問した国は南北アメリカ大陸10カ国、ヨーロッパ8カ国、アジア圏3カ国。
1993年にDJ Kenseiと、1994年に土井さん(後のD.O.I. ※D.O.I.という書き方は僕が提案)と出会い、1995年に音楽プロデュースユニットINDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)結成。
1996年のキングギドラ「行方不明」のリミックスを皮切りに、SHAKKAZOMBIE「手のひらを太陽に〜ACROSS THE 20 MIX〜」他の多くのHip Hop作品から、Sunaga T Experience「Gemini IV / V Space Nova!」、UNKLE「THE KNOCK (INDOPEPSYCHICS REMIX)」などインスト作品なども幅広く手掛けつつ、2000年にPROGRESSIVE FOrMを立ち上げる。
DJ Kenseiとも繋がりが深かった京都のDJ Kazumaから新しい才能と京都外国語大学で活動していた青木 孝允(AOKI takamasa)と高木正勝によるユニット<SILICOM>と出会い、2001年にPROGRESSIVE FOrMよりAOKI takamasa 1stアルバム「SILICOM」とSILICOM「SILICOM」DVDをリリース。
2002年にはINDOPEPSYCHICSのHip Hopやビート主体の初期作品「Meckish / Nittioatta.Nittionio」とエレクトロニカなど後期作品をまとめた「Leiwand」をリリース。
移行、半野喜弘、杉本佳一によりVegpher、Fugenn & The White Elephantsなど才能溢れるアーティストの作品をリリース。
2002年6月にバルセロナsonarにてレーベル・ショーケース、11月に六本木ヒルズTHINK ZONEにて初のレーベル・イヴェント"Voyage"を開催。2003〜2004年にはDaisyworld Discsとイヴェント"audio forma"を開催、2004/2006年にsonarsound tokyoを共同開催。
2011年6月にレーベル10周年イベントを恵比寿LIQUIDROOMで開催し1000名を超える集客を記録。
そして2020年10月にレーベルとして100枚目のアルバムninomiya tatsuki『scat』PFCD100をリリース。
2024年9月18日に2000年代以降の電子音響を支えて来た1人と言えるTAEJI Sawai唯一のアルバム「AS PLANETARY DREAMS」PFCD112をリリース。


2004〜2008年はフルでTOWA TEIのマネージャーを担当。
2013〜2015年には「EMAF TOKYO」を主宰、ヤン富田、Fennesz、Carsten Nicolaiをはじめ数多くのアーティストを招聘。
細野晴臣氏のマネージャーを長く務められた故東氏が主催された「De La FANTASIA」ではcyclo.-Ryoji Ikeda+Carsten Nicolai-やTOWA TEI他をブッキング。
2014年12月のLIQUIDROOM公演でJamie xxを招聘、2015年9月にFenneszの代官山UNIT公演を主催。


Bajune Tobetaのエージェントとしても数多くの作品に関わり、2010年1月13日に発売されたのアルバム「Africna Mode」では多くの楽曲の制作をサポート、2015年の「TOKYO GALAXY」ではArto Lindsayをブッキング、2021年9月にリリースされたbajune Tobeta「すばらしい新世界 〜RELAX WORLD〜」ではChara、Mummy-D、堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、坂本龍一によるアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤「CASA」で共演しジョビンのバックを務めていたモレレンバウン夫妻をブッキング。

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