INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.8 「半野喜弘と初期PROGRESSIVE FOrM 2」

前回の「AOKI tamakasa 3rdアルバムindigo roseと2002~2003年の初期PROGRESSIVE FOrM」では、「indigo rose」PFCD05を導入として、V.A.「FORMA. 1.02」PFCD03を挟み、Yoshihiro Hanno「9 modules.+」PFCD04のトラックリストのみ紹介しました。

 

今回はまずそのYoshihiro Hanno「9 modules.+」PFCD04から入っていこうと思います。

Cat No.: PFCD04

Artist: Yoshihiro Hanno http://www.yoshihirohanno.com/

Title: 9 modules.+ https://amzn.to/449CY0t

Release Date: 2002.10.22

Tracklisting: 

01. ” dub “

02. ” s.e.q “

03. ” c “

04. ” 2h.io_2p “

05. ” ~ “

06. ” 6 “

07. ” op. “

08. ” square “

09. ” oval “

10. .+

All Compositions : Yoshihiro Hanno / 2002 / Paris, Berlin and Tokyo

Mastering : Masato Morisaki at Saidera Mastering

1997年「Multiphonic Ensemble」名義での作品発表を皮切りに、様々なコラボレーション、映画への楽曲提供、自身のレーベル『cirque』での作品発表、また坂本龍 一を中心とする「hoon」への参加など、多岐に渡る創作活動を世界規模で実践してき た半野喜弘。今までにも増してビート/リズムへのこだわりを表現したこのアルバム は、ヒップホップ/ハウス/テクノ/エレクトロニクス/現代音楽/ジャズなどのさ まざまなサウンドを通過してきた半野の、パリ/ベルリンそして東京で書き下ろされた2002年の真実である。https://amzn.to/449CY0t

https://www.discogs.com/release/180653-Yoshihiro-Hanno-9-Modules

全曲視聴 https://progressiveform.bandcamp.com/album/yoshihiro-hanno-9-modules-pfcd04 

 

実のところ、半野さんと知り合った経緯は全く覚えておりません笑

但し、確実に青木君(AOKKI takamasa)を介してアルバムをリリースさせて頂く関係性になったのはそうだと思います。

当時から半野さんは年の半々パリと東京を拠点としながら活動を続けられていて、渡欧、特にパリへの訪問が多くなっていた青木が繋げてくれたと想像します。

アルバム「9 modules.+」に収録された「” s.e.q “」を、2002年8月20日にリリースしたV.A.「FORMA. 1.02」PFCD03に収録させて頂いた後、2002年10月22日に「9 modules.+」をリリースする流れになりました。

「9 modules.+」というアルバムタイトルは、<9つのモジュールと.+>という意味で、トラックリストを見ると判る通り、

01. ” dub “

02. ” s.e.q “

03. ” c “

04. ” 2h.io_2p “

05. ” ~ “

06. ” 6 “

07. ” op. “

08. ” square “

09. ” oval “

上記の9曲が<9つのモジュール>で、アルバムのラストを飾る10曲目の<.+>と合わせ、「9 modules.+」と半野さんが言ってました。

 

それでは「9 modules.+」から何曲か聴いて観たいと思います。

01. ” dub “ https://progressiveform.bandcamp.com/track/dub

イントロの頭の音が鳴った瞬間「うわヤバー!!」と思うのは僕だかけかそうでないかは分かりませんが、何と言うか、的を得てる、音に説得力があるなど含め、聴く者の耳を一瞬の内に引き込む中毒性に溢れたトラックだと思います。無駄がないのと同時に効果的なアクセントにも満ち溢れている。

02. ” s.e.q “ https://progressiveform.bandcamp.com/track/s-e-q

上述の「FORMA. 1.02」にも収録したど変態なミニマルテクノ半野さん流のキレッキレのトラック。キャパ200~300くらいでどこのクラブかは全く思い出せないけど、この” s.e.q “を大きなスピーカーの前で音に身を委ねるとおかしくなるくらい音の渦に巻き込まれるような感覚を覚えた事を朧げに思い出します。

なおこの「” s.e.q “」は、3曲目の「” c “」と、8曲目「 ” square “」~9曲目「” oval “」を12inch用に繋げたヴァージョンの「square_oval」にして、2003年にPFEP14として12inchリリースしました。

https://www.discogs.com/release/221273-Yoshihiro-Hanno-SEQ

 

03. ” c “ https://progressiveform.bandcamp.com/track/c

上述12inch PFEP14収録のトラック、” s.e.q “もそうだけどはっきり言ってDJ向きのフロアライクなトラックではないかもなので、何故「盤」にしたかは現在では不明だけど、当時の時代性が大きく関係したように思います。

04. ” 2h.io_2p “の曲名を見て気付かれる方もいらっしゃると思います、はい、hip hopの換字で、当時の半野さん流のHIP HOPの解釈とも受け取れると思います。

07. ” op. “は、後に田中フミヤ氏と指導されたop.discと何らかの関係はあるのかもしれません、トラックそのものはミニマルテクノとは全く関係性が無さそうですが。

08. ” square “ https://progressiveform.bandcamp.com/track/square

09. ” oval “ https://progressiveform.bandcamp.com/track/oval

そう、「square」と「oval」は基本同一線上のトラックで、CDでは2曲に分けて収録したが、12inchで「square_oval」として収録した王道系4つ打ちのミニマルテクノの半野さん解釈で、この曲は当時フロアで爆音で掛かっていた記憶です。

直接的ではないかもしれませんが、アルバム1曲目に「dub」を据えたように、どことなく<ダブ>の影響をサウンドに感じるのは僕だけではないと思います。

10. .+ https://progressiveform.bandcamp.com/track/–20

「9 modules.+」のハイライトです。9分を超える大作だけど、頭の1音から美しい電子音が響き続けながら繊細かつ壮大な物語を描いていくような楽曲で、テイストはFenneszの楽曲にも通じるところもあり、エレクトロニック・ミュージック史における隠れた名曲と言っても過言ではない曲だと僕は思っています。

この「.+」をヨーロッパ、例えばバルセロナの教会の中で聴いたりしたら多分涙腺緩みますね笑

実験性と耽美感を共存させながらも高い次元で楽曲に昇華させていけるのは半野さんの手腕ならではと思います。

この2002年の秋、名古屋と京都でちょっとツアー仕立てにし、名古屋では10月の最終週に名古屋で開催された電子芸術国際会議「ISEA2002」(International Symposium on Electronic Arts)のイベントで名古屋ダイアモンドホールで半野さんや青木、また確か後にPFCD07としてアルバム「Mind The Gap」をリリースしたNao Tokuiらもライブパフォーマンスを披露しました。

https://jsem.sakura.ne.jp/jsemwp/wp-content/uploads/2021/02/ba9d4216357a6d550c4c412ddd3e4549.pdf

そして2002年11月1日(土)~2日(日)に京都で開かれたイベント「PLEASE」の2日目11/2に、半野さんがバンド形式で、青木はソロのライブで参加しました。

忘れてました、11/1には高木正勝に加え、Tsujiko Norikoらも参加していたんですね。

そして2002年終盤のハイライトが、200211月22日に今は無き六本木ヒルズTHINK ZONEで開催されたPROGRESSIVE FOrM初のレーベルイベント「voyage.1」。

六本木ヒルズTHINK ZONとは、2003年4月25日に開業した六本木ヒルズの広告塔的な役割も兼ねながら、六本木通り沿いにあった映像や音響を駆使した先端的なイベントが開催されていた施設でありアートスペース、特に床も含め施設内全体に映像を投影出来る環境は当時唯一無二のスペースでした。

掲載したイベントフライヤーで何となくでも感じ取ってもらえると思います。

出演は当時PROGRESSIVE FOrMでのリリースあるアーティストを中心に、AOKI takamasa、Yoshihiro Hanno(半野善弘)、Nao Tokui(徳井直生)、eater、EUTROらに加え、本連載第3回目<No.3「青木孝允と高木正勝がSILICOMとして作品を発表した2000年頃のエレクトロニカ」> https://journal.bajune.com/2025/10/14/indopepshychics_3/ で触れた「当時親交のあったJan Jelinekとの共作。INDOPEPSYCHICS & Jan Jelineck「moxa」(2002/PROGRESSIVE FOrM)」のJan Jelineck氏を招聘し、映像にはRyoichi Kurokawa(黒川良一)や今となっては伝説とも言えるユニットportable[k]ommunityらを招いてshowcaseを開催しました。

INDOPEPSYCHICS & Jan Jelineck「moxa」https://www.youtube.com/watch?v=nnyBQT_KRUA

 

 

ちょうど今が2025年11月なので23年前の事ですが、音楽のスタイルなどは多種多様に広がりつつも、根底に根付くクオリティーであったりフィロソフィカルな側面は今に脈々と受け継がれているように思います。

  

次回の連載9回目では、上述のイベント「voyage.1」にも出演頂いたRyoichi KurokawaとNao Tokuiが2003年にリリースアルバムから、2003年に行われた重要なイベントまわりにフォーカスしたいと思います。

Cat No.: PFCD06

Artist: Ryoichi Kurokawa

Title: copynature

Release Date: 2003.5.30

現在最も注目を浴びている映像・音響作家の1人として海外をベースに活躍を続ける黒川良一の処女作。美しいノイズとリズムで構築されたその音響世界に彼等の大きな才能を見たのは細野晴臣であり、のちにDaisyworldでのリリースへと発展する。https://amzn.to/3X2AXzj

https://progressiveform.bandcamp.com/album/ryoichi-kurokawa-copynature-pfcd06

 

Cat No.: PFCD07

Artist: Nao Tokui

Title: Mind The Gap

Release Date: 2003.6.25

2002年秋のヨーロッパツアーでの印象を元に綴られた期待のアーティスト徳井 直生(ナオ・トクイ)による待望のファーストアルバム!彼の凄さは、そのソフト 開発に代表される卓越したプログラミングセンスだけに留まらず、同時に見事なま での音楽表現を可能にするその抜群のセンスと豊かな音楽性にある!https://amzn.to/43ya9L8

https://progressiveform.bandcamp.com/album/nao-tokui-mind-the-gap-pfcd07

2025/11/7 nik c/o PROGRESSIVE FOrM

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この記事を書いた人

東京出身。PROGRESSIVE FOrMレーベル主宰/エージェントなど。
訪問した国は南北アメリカ大陸10カ国、ヨーロッパ8カ国、アジア圏3カ国。
1993年にDJ Kenseiと、1994年に土井さん(後のD.O.I. ※D.O.I.という書き方は僕が提案)と出会い、1995年に音楽プロデュースユニットINDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)結成。
1996年のキングギドラ「行方不明」のリミックスを皮切りに、SHAKKAZOMBIE「手のひらを太陽に〜ACROSS THE 20 MIX〜」他の多くのHip Hop作品から、Sunaga T Experience「Gemini IV / V Space Nova!」、UNKLE「THE KNOCK (INDOPEPSYCHICS REMIX)」などインスト作品なども幅広く手掛けつつ、2000年にPROGRESSIVE FOrMを立ち上げる。
DJ Kenseiとも繋がりが深かった京都のDJ Kazumaから新しい才能と京都外国語大学で活動していた青木 孝允(AOKI takamasa)と高木正勝によるユニット<SILICOM>と出会い、2001年にPROGRESSIVE FOrMよりAOKI takamasa 1stアルバム「SILICOM」とSILICOM「SILICOM」DVDをリリース。
2002年にはINDOPEPSYCHICSのHip Hopやビート主体の初期作品「Meckish / Nittioatta.Nittionio」とエレクトロニカなど後期作品をまとめた「Leiwand」をリリース。
移行、半野喜弘、杉本佳一によりVegpher、Fugenn & The White Elephantsなど才能溢れるアーティストの作品をリリース。
2002年6月にバルセロナsonarにてレーベル・ショーケース、11月に六本木ヒルズTHINK ZONEにて初のレーベル・イヴェント"Voyage"を開催。2003〜2004年にはDaisyworld Discsとイヴェント"audio forma"を開催、2004/2006年にsonarsound tokyoを共同開催。
2011年6月にレーベル10周年イベントを恵比寿LIQUIDROOMで開催し1000名を超える集客を記録。
そして2020年10月にレーベルとして100枚目のアルバムninomiya tatsuki『scat』PFCD100をリリース。
2024年9月18日に2000年代以降の電子音響を支えて来た1人と言えるTAEJI Sawai唯一のアルバム「AS PLANETARY DREAMS」PFCD112をリリース。


2004〜2008年はフルでTOWA TEIのマネージャーを担当。
2013〜2015年には「EMAF TOKYO」を主宰、ヤン富田、Fennesz、Carsten Nicolaiをはじめ数多くのアーティストを招聘。
細野晴臣氏のマネージャーを長く務められた故東氏が主催された「De La FANTASIA」ではcyclo.-Ryoji Ikeda+Carsten Nicolai-やTOWA TEI他をブッキング。
2014年12月のLIQUIDROOM公演でJamie xxを招聘、2015年9月にFenneszの代官山UNIT公演を主催。


Bajune Tobetaのエージェントとしても数多くの作品に関わり、2010年1月13日に発売されたのアルバム「Africna Mode」では多くの楽曲の制作をサポート、2015年の「TOKYO GALAXY」ではArto Lindsayをブッキング、2021年9月にリリースされたbajune Tobeta「すばらしい新世界 〜RELAX WORLD〜」ではChara、Mummy-D、堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、坂本龍一によるアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤「CASA」で共演しジョビンのバックを務めていたモレレンバウン夫妻をブッキング。

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