なぜ私は「スマホを寝室から排除するスピーカー」を作ったのか

私は、最初から「便利なスピーカー」を作ろうとしていたわけではありません。
むしろ、私が最初に問題視していたのは、睡眠の質そのものではなく、“睡眠に入る直前の人間の行動”でした。

どれほど良い寝具があっても、
どれほど医学的に正しい入眠法を知っていても、
寝る直前までスマートフォンを触っていれば、
人の脳と神経は“回復モード”に入ることができません。

通知、SNS、動画、仕事の連絡、終わらない情報の流入。
いまの社会では、人は「眠る直前まで、他人の情報を見続ける」構造の中に置かれています。

私は、この構造そのものが、
現代人の回復を破壊している根源だと考えました。


目次

なぜ、BluetoothとWi-Fiをあえて排除したのか

nemcaro初号機において、私はあえてBluetoothやWi-Fiを搭載しませんでした。
これは技術的な制約ではなく、明確な思想による選択です。

もしスマホと簡単につながってしまえば、
人は必ず、次の行動を取ります。

  • 再生中に通知を見る
  • 曲を探してアプリを開く
  • SNSを確認する
  • 結果、脳が再び“覚醒状態”に戻る

つまり、“便利さ”はそのまま“覚醒装置”になってしまう。

私は、nemcaroを
「再生するための機械」ではなく、
“寝る行為そのものを切り替えるスイッチ”として設計したかったのです。

だから、あえて不便にしました。
スマホと直接つながらない。
通知も来ない。
情報も入ってこない。

その代わり、
人は 「音をかけたら、そのまま眠るしかない環境」に入ります。

これは家電の設計ではありません。
行動の設計です。


nemcaroが作っているのは「音」ではなく「入眠までの構造」

多くの人は、nemcaroを見ると「音楽を流す装置」だと思います。
しかし私が設計しているのは、音そのものではありません。

設計しているのは、次の一連の流れです。

  • 寝室にスマホを持ち込まない
  • 照明を落とす
  • 音が流れる
  • 何も操作せず、そのまま横になる
  • 意識が自然に内側へ沈んでいく

これは単なるUIUXではなく、
“人の神経の向きを切り替える導線設計”です。

現代社会では、
人の神経は常に「外側(情報・評価・他者)」に引っ張られ続けています。
nemcaroは、この神経の向きを、強制的に「内側(身体・呼吸・感覚)」へ戻す装置です。


なぜ「睡眠計測」から先にやらなかったのか

睡眠デバイスの世界では、多くのプロダクトが
「計測」「スコア化」「可視化」から入ります。

しかし私は、それを最初にやることの危うさを強く感じていました。

スコアが出れば、
人は眠りを「評価される対象」にしてしまいます。
良い・悪い、点数が高い・低い。
すると、眠りは回復ではなく、新しいストレスになります。

だからnemcaroは、まず先に

  • 習慣を変える
  • 環境を変える
  • 行動を変える

ことから始めました。

計測は、そのあとでいい。

nemcaroは、
まず「眠れる人間の状態」を身体に取り戻し、
そのうえで、次の段階としてデータや最適化に進む設計です。


nemcaroは「家電」ではなく「行動変容装置」である

私は、nemcaroを
家電でも、音響機器でも、ガジェットでもなく、
「行動変容装置」だと定義しています。

人は、自分ひとりの意思だけで
生活習慣を変えることができません。

  • 早く寝よう
  • スマホを見ないようにしよう
  • ちゃんと休もう

そう決意しても、
ほとんどの人は数日で元に戻ります。

だから必要なのは、
「意志」ではなく、“環境による半強制”です。

nemcaroは、そのための装置です。

眠りに入るまでの導線を、
人の意志の外側から、静かに、しかし確実に書き換える。

それがnemcaroの本質です。


なぜこの思想が、B2B・医療・社会インフラへ広がっていくのか

この設計は、個人向けプロダクトに留まりません。

  • ホテルでは「客室の回復環境そのもの」を設計できる
  • 医療の現場では「自律神経を整える導線」を提供できる
  • 企業では「休息によるパフォーマンス回復」を標準化できる

つまりnemcaroは、
“眠る装置”ではなく、“回復環境を空間ごと設計する装置”として社会に広がっていきます。

これは、②で述べた
RELAX WORLD・Musiora OS・Relaxest という構造に、そのまま接続されます。

nemcaroは、その構造の中で
「人の行動が、実際に変わる現場」を担っています。


家電は真似できても、「思想と構造」は真似できない

nemcaroの形、音質、デザイン。
それらは、いずれ必ず模倣されます。

しかし、

  • なぜ不便にしたのか
  • なぜ通知を切ったのか
  • なぜ計測より先に行動を変えたのか
  • なぜ音を回復の装置として再定義したのか

この思想と構造のレイヤーは、コピーできません。

私はそこに、nemcaroというプロジェクトの
長期的な競争力のすべてが集約されていると考えています。


次回予告

次に書くのは、
④【Musiora OS】なぜ私は「音源のマーケット」ではなく「音源のOS」を作ろうとしているのか

nemcaroで生まれた「音の使われ方」は、
そのままMusiora OSの思想と接続されています。

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この記事を書いた人

眠りと瞑想のための癒やしサウンド&コンテンツ、プロダクトを制作、ECショップ運営。また癒やし空間スペースを展開。またヒーリング・ブランド「RELAX WORLD」のプロデューサー。株式会社クロアの代表取締役。坂本龍一、アート・リンゼイ、大貫妙子、高橋幸宏、CHARA、キリンジなどをゲストに迎えたソロアルバムを発表。

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