灯りの消えない窓を見上げながら
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夜になると、都市は少しだけ本音を漏らすように思う。
昼の輪郭ははっきりしすぎていて、
どこにも余白がなくて、
息をするだけで意味が問われるような窮屈さがあるけれど、
夜の都市は、形が曖昧で、
どこかで誰かが静かに泣いたとしても、それはすぐに灯りに溶けていく。
信号待ちの交差点で、
ビルのガラスに映る自分の姿が一瞬だけ他人に見える時がある。
その距離感が、少し好きだ。
自分から離れすぎず、近づきすぎず、
ただ「いま、ここにいる」というだけの存在に戻る感じ。
最近、夜に少しずつ読み返している本がある。
どのページから読んでもいいし、
読み終わらなくてもいい。
ただ、言葉の湿度を手で確かめるみたいに、
ゆっくり触れていく本。
『夜と霧』 https://amzn.to/4qMbl7p
この本は、何かを教えてくれるというより、
「もう知っていたこと」に静かに光を当ててくれる。
耐えるとか、強くあるとか、そういうものではなくて、
それでも、生きているという事実そのもののあたたかさに触れる感覚。
夜の都市は残酷でもあるけれど、
同じくらい優しい。
どちらかだけ、なんてことはなくて、
その両方のあいだで、私たちは揺れながら歩いている。
今日も、灯りの消えない窓を見上げながら帰った。
誰かがまだ起きているというだけで、 すこし呼吸が楽になる夜がある。
