INDOPEPSHYCHICSから紡がれた日本のエレクトロニック・ミュージックの一端 No.7 「AOKI tamakasa 3rdアルバムindigo roseと2002~2003年の初期PROGRESSIVE FOrM」

前回の「AOKI tamakasa」では、SILICOM自然消滅と時を同じくしてリリースされた「SILICOM two」を軸に、2002年のバルセロナSónarにおける「PROGRESSIVE FOrMがレーベルshowcase」、また2002年9月14日にローマ市内のローマ建築を彷彿とさせるような建築物の中で開催されたDISSONANZEという新しいデジタルアートと電子音楽のフェスティバルで青木が当時のベストとも言えるような素晴らしいライブパフォーマンスを行った事に触れました。

 

今回はAOKI takamasaの3rdアルバム「indigo rose」から始め、2002~2003年のPROGRESSIVE FOrM初期を紹介したいと思います。

Cat No.: PFCD05

Artist: AOKI takamasa http://www.aokitakamasa.com/

Title:  indigo rose

Release Date: 2002.12.17

Tracklisting: 

01. cover your ears

02. Dear people

03. hope

04. capital e

05. photons from my window

06. wooden piece

07. pipe tale – indigo rose

08. there’s not much left.

All done : AOKI takamasa / 2002 / Paris, Istanbul and Osaka

Mastering : Masato Morisaki at Saidera Mastering

ツジコ・ノリコをフューチャーしたタイトル曲『pipe tale – indigo rose』を含む青木孝允、待望のサードアルバム。往々にして「無機質な音響実験」とこれまで捉えられがちであった「エレクトロニカ」という言葉を敢えて引用するのであれば、2002年最高のエレクトロニカアルバムと言えよう。全編に渡り貫かれているリズム及びサウンドメイキングへのきめ細やかなアプローチと確かな構成力、電子音までをも感情の意にままに操る天性の音楽的資質とそれを支える技術力。無数の粒子による空間と時間軸が織り成す音響芸術とでも言うべき壮大なイメージがそこに広がる。https://amzn.to/49ULC6H

https://www.discogs.com/release/97817-AOKI-Takamasa-Indigo-Rose

全曲視聴:https://progressiveform.bandcamp.com/album/aoki-takamasa-indigo-rose-pfcd05

2002年頃のAOKI takamasaのプロフィール

1976年生まれ、大阪府出身。自身にとってのファースト・アルバム「SILICOM」をリリースして以来、自らの方法論を常に冷静に見つめ続け、独自の音楽表現の領域を力強く押し拡げる気鋭のアーティスト。2004年~2011年はヨーロッパに拠点に制作活動、世界各国でのライブ活動を行い、国際的に非常に高い評価を受けている。2011年に帰国し、現在は大阪在住。これまでにPROGRESSIVE FOrM、op.disc、fatcat、raster-noton、commmons等、国内外の人気レーベルからのソロ作品や、過去には高木正勝とのユニットSILICOM、Tujiko Norikoとのコラボレーション・アルバムもリリース。また、坂本龍一、半野喜弘、サカナクション等のリミックスやエンジニアとしてBUN / Fumitake Tamuraらのミックスも手掛けている。音楽活動の他、写真家としても精力的に活動中。

この「indigo rose」は当時の日本人エレクトロニカ~エレクトロニック・ミュージック界隈の中でも群を抜いたクオリティーを持ったアルバムでした。2nd「SILICOM two」で内省的な楽曲が多くを占めていたところから一気にサウンドが艶やかになり、綺麗で耳に残るメロディーが多く響くようになりました。

01. cover your ears

Indigo roseのオープンニングトラック、これから始まる音世界が明るいかを予想させるようなプロローグ。

02. Dear people 

最初の音が流れてリズムを刻み始めるイントロを聴いただけど鳥肌が立ち涙が出そうになるのは僕だけかもしれません、とても印象的な「Dear people」。ボコーダーを使って「Dear people」と話しかける明るい未来の中にどことなく寂しさも滲ませたような感覚を感ぜずにはいられません。

02:08から03:28辺りにまるでドラムソロを思わせる間奏パートも見事の一言。

03. hope 

「hope」という曲名がまず印象的、初めて乾いたテイストのタイトなスネアを使い、シンプルながらに削ぎ落とした美しいコード進行とメロディー、そして疾走するキックとリズム隊。ちなみにこの「hope」に対して「Nohope」という青木の楽曲もあるんですが、それにはおって触れたいと思います。

05. photons from my window 

アルバム「indigo rose」におけるハイライトの1つ。疾走する彼の真骨頂的なビートにマイナーコードを当て展開させてたトラックで当時のライブでも良く演奏していました。同時に、彼の内面を覗き見えるような感覚も覚えます。

AOKI takamasaは後に田中フミヤ氏と半野(善弘)さんによるop.discを経て教授(勿論、故・坂本龍一氏)のcommmonsにも参加してリリースをしますが、教授も青木の才能を高く期待していた1人でした。

坂本龍一

「ぼくはAOKIくんの音楽を、いわゆるエレクトロニカの一つとはとらえていません。もっと広がりをもったポップスではないでしょうか。一方でAOKIくんの音楽は、エレクトロニカと言われる音楽の中でも、ずばぬけて緻密に作られていて感動ものですが、それだけではなく、強力なグルーヴとすぐれた音色のセンス、それにユーモアというか、独特のおかしみも感じられます。たくさんの可能性を秘めた才能ですので、これからどういう音楽を作っていってくれるのか、とても楽しみです。」

07. pipe tale – indigo rose

この2000年代初めはまだあまりボーカリストのfeat.表記はしていなかったのかもしれない、今で言うところの「pipe tale – indigo rose feat. tsujiko noriko」。パリに住んでいたtsujiko norikoをボーカリストに迎えた楽曲で、青木も当時良くパリに赴いていて、パリでの企画で共演した関係の中から生まれた楽曲だと思います。

のち、2005年には<AOKI Takamasa + Tujiko Noriko>名義で「28」というアルバムをUKの名門FatCat Recordsからリリースしています。

https://www.discogs.com/master/15376-AOKI-Takamasa-Tujiko-Noriko-28

なおこの時期に3rdアルバム「indigo rose」とは別に、AOKI Takamasa「Srd. / A Short Break Remix」という12ichを、未発表だった「Srd.」と、2000年にリリースされた「Yoshihiro Hanno – Music On Canvas #1 April」のリミックス盤で2001年にリリースされた「Yoshihiro Hanno – Music On Canvas #2 April Remixes」に収録された青木君による「A Short Break Remix」をカップリングでpfL_8としてリリース。

https://www.discogs.com/release/66104-AOKI-Takamasa-Srd-A-Short-Break-Remix

https://www.discogs.com/ja/master/3262528-Yoshihiro-Hanno-Music-On-Canvas-2-April-Remixes

 

 

また翌2003年に「indigo rose」からの12inchとして「hope」と下記するコンピ「FORMA. 1.02」に収録した「hope」のアンサーテイク的な「nohope」に、「Photons From My Window」と「Dear People」の4曲を収録してリリース。

https://www.discogs.com/release/221272-AOKI-Takamasa-Hope

 

ここで話しを少し巻き戻します。

AOKI takamasaの流れで1st「SILICOM」PFCD01、2nd「SILICOM two」PFCD02、3rd「indigo rose」PFCD05と繋ぎましたが、そう、「SILICOM two」と「indigo rose」の間に、PFCD03とPFCD04があるのです。

Cat No.: PFCD03

Artist: Various Artists

Title: FORMA. 1.02

Release Date: 2002.8.20

Tracklisting: 

01. Tsuchiya Yasuyuki / Live For https://progressiveform.bandcamp.com/track/tsuchiya-yasuyuki-live-for

02. Sounguarehouse / ae eh ee

03. AOKI takamasa / Dear People

04. #de.niro / Mole’s Subway

05. Yoshihiro Hanno / ” s.e.q “

06. AOKI takamasa / nohope https://progressiveform.bandcamp.com/track/aoki-takamasa-nohope

07. Clickety and Clack / Pine https://progressiveform.bandcamp.com/track/clickety-and-clack-pine

08. Tsuchiya Yasuyuki / Spring

09. eater / Flower of Life https://progressiveform.bandcamp.com/track/eater-flower-of-life

10. 30506 / vvv https://progressiveform.bandcamp.com/track/30506-vvv-2

11. EUTRO / Scent (Original Mix)

Mastering : Masato Morisaki at Saidera Mastering

記念すべきレーベルのコンピレーションシリー ズ『FORMA.』の第一弾!「実験的であるのと同時にリスニングにも対応し質の高い作品を表現する」という理念を表した、いやなによりも音楽的魅力がたっぷり詰まっているアルバム!

https://www.discogs.com/release/176675-Various-Forma-102

全曲視聴 https://progressiveform.bandcamp.com/album/various-artists-forma-102-pfcd03

 

当時の音楽観の一旦を垣間見れるバラエティーに富んだ聴きやすい楽曲で構成されたコンピレーションなので、機会あれば是非ご視聴下さい。AOKI takamasa君やeaterがコントロールシートに座ってます。

今でも表立って活動をしているのはAOKI takamasaと半野さん(Yoshihiro Hanno)に、本コンピではClickety and Clack名義で参加してくれたQosmo代表取締役で工学博士・DJの徳井 直生さんくらいでしょうか。

なお「FORMA. 1.02」とは、「FORMA.」シリーズの1番目で(20)02年のリリースという意味での「1.02」、2014年の4作目「FORMA. 4.14」まで続きます。

ジャケの写真は僕がパリかバルセロナで当時流行っていたLOMOで撮った写真で、内ジャケはバルセロナのエル・プラット空港の搭乗口。

またおそらく2001年頃からだと思います、当時からパリと東京の2拠点で活動を続けられていた半野(喜弘)さんとおそらく青木君を通じて交流が始まり、「FORMA. 1.02」の2ヶ月後にリリースした半野さんのアルバム「9 modules.+」から「” s.e.q “」を先行シングル的に「FORMA. 1.02」に収録させて頂きました。

Cat No.: PFCD04

Artist: Yoshihiro Hanno http://www.yoshihirohanno.com/

Title: 9 modules.+

Release Date: 2002.10.22

Tracklisting: 

01. ” dub “

02. ” s.e.q “

03. ” c “

04. ” 2h.io_2p “

05. ” ~ “

06. ” 6 “

07. ” op. “

08. ” square “

09. ” oval “

10. .+

All Compositions : Yoshihiro Hanno / 2002 / Paris, Berlin and Tokyo

Mastering : Masato Morisaki at Saidera Mastering

1997年「Multiphonic Ensemble」名義での作品発表を皮切りに、様々なコラボレーション、映画への楽曲提供、自身のレーベル『cirque』での作品発表、また坂本龍 一を中心とする「hoon」への参加など、多岐に渡る創作活動を世界規模で実践してき た半野喜弘。今までにも増してビート/リズムへのこだわりを表現したこのアルバム は、ヒップホップ/ハウス/テクノ/エレクトロニクス/現代音楽/ジャズなどのさ まざまなサウンドを通過してきた半野の、パリ/ベルリンそして東京で書き下ろされた2002年の真実である。https://amzn.to/4nXKXET

https://www.discogs.com/release/180653-Yoshihiro-Hanno-9-Modules

全曲視聴 https://progressiveform.bandcamp.com/album/yoshihiro-hanno-9-modules-pfcd04

 

次回は半野さんのアルバム「9 modules.+」PFCD04から入り、音楽の旅を続けたいと思います。

2025/10/31 nik c/o PROGRESSIVE FOrM

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この記事を書いた人

東京出身。PROGRESSIVE FOrMレーベル主宰/エージェントなど。
訪問した国は南北アメリカ大陸10カ国、ヨーロッパ8カ国、アジア圏3カ国。
1993年にDJ Kenseiと、1994年に土井さん(後のD.O.I. ※D.O.I.という書き方は僕が提案)と出会い、1995年に音楽プロデュースユニットINDOPEPSYCHICS(インドープサイキックス)結成。
1996年のキングギドラ「行方不明」のリミックスを皮切りに、SHAKKAZOMBIE「手のひらを太陽に〜ACROSS THE 20 MIX〜」他の多くのHip Hop作品から、Sunaga T Experience「Gemini IV / V Space Nova!」、UNKLE「THE KNOCK (INDOPEPSYCHICS REMIX)」などインスト作品なども幅広く手掛けつつ、2000年にPROGRESSIVE FOrMを立ち上げる。
DJ Kenseiとも繋がりが深かった京都のDJ Kazumaから新しい才能と京都外国語大学で活動していた青木 孝允(AOKI takamasa)と高木正勝によるユニット<SILICOM>と出会い、2001年にPROGRESSIVE FOrMよりAOKI takamasa 1stアルバム「SILICOM」とSILICOM「SILICOM」DVDをリリース。
2002年にはINDOPEPSYCHICSのHip Hopやビート主体の初期作品「Meckish / Nittioatta.Nittionio」とエレクトロニカなど後期作品をまとめた「Leiwand」をリリース。
移行、半野喜弘、杉本佳一によりVegpher、Fugenn & The White Elephantsなど才能溢れるアーティストの作品をリリース。
2002年6月にバルセロナsonarにてレーベル・ショーケース、11月に六本木ヒルズTHINK ZONEにて初のレーベル・イヴェント"Voyage"を開催。2003〜2004年にはDaisyworld Discsとイヴェント"audio forma"を開催、2004/2006年にsonarsound tokyoを共同開催。
2011年6月にレーベル10周年イベントを恵比寿LIQUIDROOMで開催し1000名を超える集客を記録。
そして2020年10月にレーベルとして100枚目のアルバムninomiya tatsuki『scat』PFCD100をリリース。
2024年9月18日に2000年代以降の電子音響を支えて来た1人と言えるTAEJI Sawai唯一のアルバム「AS PLANETARY DREAMS」PFCD112をリリース。


2004〜2008年はフルでTOWA TEIのマネージャーを担当。
2013〜2015年には「EMAF TOKYO」を主宰、ヤン富田、Fennesz、Carsten Nicolaiをはじめ数多くのアーティストを招聘。
細野晴臣氏のマネージャーを長く務められた故東氏が主催された「De La FANTASIA」ではcyclo.-Ryoji Ikeda+Carsten Nicolai-やTOWA TEI他をブッキング。
2014年12月のLIQUIDROOM公演でJamie xxを招聘、2015年9月にFenneszの代官山UNIT公演を主催。


Bajune Tobetaのエージェントとしても数多くの作品に関わり、2010年1月13日に発売されたのアルバム「Africna Mode」では多くの楽曲の制作をサポート、2015年の「TOKYO GALAXY」ではArto Lindsayをブッキング、2021年9月にリリースされたbajune Tobeta「すばらしい新世界 〜RELAX WORLD〜」ではChara、Mummy-D、堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、坂本龍一によるアントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤「CASA」で共演しジョビンのバックを務めていたモレレンバウン夫妻をブッキング。

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