なぜ私は「眠り × 音 × 医療 × データ」を一つに束ねるのか

私は、音楽家として活動を始めました。
作詞・作曲・編曲・プロデュースを通じて、音が人の感情や集中、回復に与える影響を、長年現場で体感してきました。ヒーリング音楽、作業用BGM、アンビエント。音には確かに、人を整える力があります。
しかし、ある時から強い違和感を持つようになりました。
「音楽だけでは、人は本質的には回復しきれない」
どれほど良い音を届けても、睡眠環境、生活習慣、スマートフォン依存、自律神経の乱れといった“環境そのもの”が変わらなければ、回復は一時的なものに留まる。そう確信するようになったのです。
ここから私の思考は大きく転換しました。
音楽を“作品”として届けるだけでなく、「行動と環境を変える装置」へ進化させなければならないと。
その答えが、nemcaroでした。
スマートフォンを寝室に持ち込ませない。
BluetoothやWi-Fiといった“便利さ”を、あえて初期モデルでは排除する。
音・香り・空間を一体で設計する。
nemcaroは、単なるスピーカーではありません。睡眠という行動そのものを変えるための体験装置です。
nemcaroは、あえて“つながらない”ところから始めました。
それは、習慣が変わらない状態でデータだけを集めても、人は本質的には変わらないと考えたからです。
まず行動を変える。その先に初めて、データが意味を持つ。
この順番こそが、私が最も大切にしている設計思想です。
一方で、音楽そのものの産業構造にも、大きな転換点が訪れました。
生成AIの進化による音源の無限供給、価格崩壊。従来の「音源販売」や「マーケットプレイス型モデル」は、構造的に持続しない時代に入りました。
そこで生まれたのが、Musiora OSという構想です。
これは音楽を売るプラットフォームではありません。
音の用途適性・安全性・権利・証跡を管理する“音源のインフラOS”です。
睡眠、集中、回復、医療、空間演出。
用途に適した音を、法人が安心して使える環境をAPIとして提供する。Musioraは“音楽SaaS”ではなく、B2B向けの音の基盤インフラです。
そして、最終的に辿り着いたのが、医療・美容の現場でした。
nemcaroで睡眠という行動を変え、Musioraで音の安全な活用基盤を整えても、人が実際に変わる最前線は、身体そのものに触れる現場にあります。
Relaxestは、その接点です。
ここで私は初めて、音・睡眠・身体・回復が一本の線でつながることを、実感として理解しました。
さらに今、私はこの「回復・行動変容」の領域を、データとAPIによって再設計しようとしています。
nemcaroによって生まれた“習慣”。
その上で取得される“睡眠データ”。
それを、企業・医療・宿泊・ウェルネスの現場へ還元する仕組み。
属人的な癒しではなく、再現可能な回復インフラへと進化させることが、次の段階です。
なぜ、ここまでやるのか。
理由は明確です。
睡眠と回復は、これからの10年で、最も重要な経済インフラになるからです。
家電、寝具、アパレル、音楽、医療、SaaS、データ。
これらは本来、バラバラに存在するべきものではありません。
私はこれらを一つの構造に束ね、「眠りと回復の経済圏」そのものをつくることに、人生を賭けています。
この挑戦は、決して簡単な道ではありません。
失敗の確率も高い。
それでも私は、「眠り × 音 × 医療 × データ」という未踏の組み合わせにこそ、次の巨大産業の核があると、確信しています。
そして、この構想は、もはや私一人の力だけで完結するものではありません。
現時点では、限られたリソースの中で着実に前に進めていますが、
事業の成長フェーズに応じて、CFO、CTO、COO、海外統括といった役割を段階的に迎え入れながら、
この構想を現実の産業へと育てていきたいと考えています。
これは、単なる事業計画ではありません。
人が回復しながら、経済も成長するための、新しいインフラづくりへの挑戦です。
